ベトナムの基本情報

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2017年、ベトナムに訪れた日本人旅行者は約70万人以上。ホーチミンが最多の35万人で、次いでハノイが30万人。中部ダナンは5.5万人と3番手となっています。そんなベトナムは、昨今日本人の海外旅行先にしばしば選ばれ、その治安の良さから高校の修学旅行先としても候補に挙がっているほど。次の旅行先がベトナムに決まったのであれば、まずはベトナムという国を知るところからはじめてはいかがでしょうか。

今回はベトナムという国の基本情報をお届けします。

目次

    ベトナムの基本概要

    ベトナムの正式国名は「ベトナム社会主義共和国」。人口は9千万人で、2026年までに1億人を突破する見込みとなっている意外と大きな国です。国土は日本の九州を除いた面積とほぼ同じで、北は中国、東と南は南シナ海(フーコック島南部はタイランド湾)、西はカンボジアといった位置関係。

    首都はホーチミンではなく「ハノイ」

    しばしば誤解されがちですが、ベトナムの首都は北部ハノイとなります。旅行者にとっては南部ホーチミンのイメージが強いので勘違いされる方もいます。もともとベトナムは南北分断国家で、ベトナム戦争を経て北ベトナムが南ベトナムを吸収し、首都をハノイに定めた経緯があります。

    社会主義は町中では感じない

    社会主義というと、なんだか固いイメージがありますね。現在では中国や北朝鮮、キューバくらいしかないので、それも偏ったイメージの原因になりがちです。しかし、ベトナムは国も人も非常に大らか。観光で町を歩いているだけでは、社会主義を感じることはまずないと言っていいでしょう。

    ただし、「公衆の場で政府の悪口を言ってはいけない」など社会主義ならではのルールはあります。外国人もベトナムの法律が適用されるので、ベトナムにお邪魔させてもらっているという心構えで観光を楽しむのがトラブル回避のコツ。普通に振る舞えば、こちらが驚くほど日本人は大歓迎してくれます。

    地域によって異なるベトナムの気候

    南北に長い国土を持ち、山脈と海に挟まれたベトナムは、地域によって気候が異なることを覚えておきましょう。東南アジア=常夏というイメージですが、1年中暑い熱帯気候を持つのは、ベトナムの中でも南部エリアのみとなります。ホーチミン旅行ではイメージ通りの気候となりますが、半袖短パン、ノースリーブなどでハノイやダナンに行った際は、肌寒くて後悔するかもしれません。

    北部首都ハノイは温帯夏雨気候(ケッペン気候区分)となり、日本と同じ温帯気候となり季節を感じることができます。北部山岳地帯のサパなどでは、冬の時期には雪が降ることもあるように、季節によって服装は考えなければなりません。

    中部ダナンは熱帯モンスーン気候。四季はないものの、時期によってはジャンパーが必要なほど肌寒くなるほか、季節風の影響で他エリアと雨季と乾季の時期が異なるため、初めての方は現在の気温や気候をよく確認する必要があります。また、10月、11月は台風の影響で海は冬の日本海のように荒れ、また道路は冠水して非常に危険となります。

    南部ホーチミンは熱帯サバナ気候。“常夏”のイメージ通り、年間を通して蒸し暑い日が続き、平均気温は30度を下回りません。まさに絵に描いた南国体験を実感することができるでしょう。四季はなく、雨季と乾季の二季となり、雨季には1日数回のスコール(突発性豪雨)が降ります。

    宗教と民族

    ベトナムは中国文化の影響を色濃く受けていて、その歴史は有史のはじめから続いています。国の定める宗教はないもの、国民の7割から8割近くは仏教徒。2割はキリスト教で残りの1割がカオダイ教などの新興宗教となります。仏教は日本と同じ大乗仏教なので、ラオスやタイなどと比べると戒律は緩く、熱心な仏教徒は多いものの、信仰の自由は保証されています。「今日は好きなテレビがあるからお寺行くの来週にしよう」といった庶民の本音も聞くことができます。

    多民族国家としてのベトナム

    ベトナムは世界でも象徴的ともいえる典型的な多民族国家です。まず、ベトナムの大部分を構成する、いわゆる「ベトナム人」がキン族となり、人口の約85%を占めています。ベトナムでは国民全員に国民IDが配布されていますが、そこにはきちんと民族の記載欄があります。残りの15%は少数民族で構成され、2017年の段階で53の民族が政府に認められています。その内チャム族や華モン族、コホー族やエデ族といった民族の中には、山を下りて積極的にキン族や外国人観光客と交流する商人もいます。少数民族の作る民芸品はベトナム旅行で欠かせないお土産の一つですし、彼らとの交流もベトナムならではの魅力となるでしょう。

    公用語はベトナム語。ただし都市部では英語も普及している

    公用語はベトナム語となります。6声から7声で成る声調言語のベトナム語は、日本人にとっては最も難解な言語の一つ。ただし、簡単な一言フレーズであれば飛行機の中でも十分覚えることができますし、実践することも可能です。

    近年ベトナムでは都心を中心に英語熱が高まり、語学学習をする若者が急増しています。特にハノイやホーチミンといった大都市では、観光エリアを中心に店のスタッフの多くは英語を話すことができます。また、昨今は日本語を学習する学生も増え、日本人観光客が行き交う観光エリアでは、日本語スタッフが常駐しているお店も珍しくありません。

    ベトナム料理。主食はご飯と麺

    ベトナムの食文化は日本と同様に非常に多様性に富んでいます。ベトナム人の主食は米となりますが、実は麺も同じくらい食べられていて、朝食や昼食、夜食の定番でもあります。「ベトナムの名物は?」と訊かれて「フォー」と応える人は多いでしょう。しかし、フォーのような米粉麺は非常に種類が豊富で、実際ベトナムの町を歩いてみれば、さまざまな麺料理があることが分かるでしょう。

    また、郷土料理にも注目してほしいところ。その土地ならではの名物料理も旅の道中の楽しみ。ベトナム料理といえばフォーや生春巻きを真っ先に想像される方は、現地のレストランでメニューを調べたとき、その種類の多さに圧倒されることでしょう。

    通貨はベトナムドン(VND)。ドルも使える確率大

    ベトナムの通貨はベトナムドン(表記VND)となり、2017年12月現時点で2万ドン=100円のレート。一般的にはどのお店もベトナムドンで会計することになります。空港やホテルはもちろん、ゴールドショップ、両替所なども町のいたるところにあるため、観光の中で両替に困ることはないでしょう。ただし、ベトナムは年々上昇するインフレのため通貨単位が日本よりも多くなっています。

    2017年現時点での最高紙幣は50万ドン札となりますが、日本円にすると約2500円程度しかなりません。その下には20万ドン札、10万ドン札、5万ドン札、2万ドン札、1万ドン札、5000ドン札、2000ドン札、1000ドン札、500ドン札、200ドン札があります。200ドン札と硬貨はほとんど出回っていませんし、500ドン以下の端数は切り捨てか切り上げされることはほとんどです。

    また、ベトナム現地では多くのお店でドル対応をしています。ただし、政府がベトナムドンの普及促進を掲げ、会計はドン払いを原則にするよう通達があってから、一部店ではドル払いを拒否するところも出ています。

    進化を続けるベトナムのお土産

    1900年代に日本人女性の間でブームとなったベトナム雑貨。これまでの定番雑貨やチープ雑貨と比べ、その国の伝統工芸をお土産にしたアイテムは旅行者を虜にしました。ホーチミンのドンコイエリアには100を超えるお土産店が並んでいます。また、近年はさらに進化したお店独自のオリジナルアイテムが人気。専門の職人が手掛けた一点物の陶磁器やバッグ、一つ一つ丁寧に作り上げる洋服のオーダーメイドはベトナムならではのお土産となるでしょう。

    また、ここ数年の間で着々とベトナム土産として浸透をはじめているのが、現地のベトナム人および外国人が少数精鋭で立ちあげた地場ブランド。ベトナム南部特産の生はちみつやマカダミアナッツを農場から直接仕入れている「ユーゴック(yugoc)」や、カカオ70%以上の高級ダークチョコレートを売る「マルゥ(marou)」、いびつなデザインとパステルカラーが人気のホームウェアブランド「アマイ(amai)」などは、すでに現地では勝手知ったる人気お土産ブランドですが、いずれもベトナムに根付いた外国人とベトナム人パートナーが立ち上げたブランドアイテムとなります。

    ベトナムの交通事情

    ベトナムは現在電車が一般的に普及していなく、鉄道は長距離列車のみとなります。また、列車はディーゼルなので時速70km程度しかスピードが出ない他、揺れと機関車特有の騒音もあります。旅行者が市内観光の足として利用するのは、専らタクシーとなるでしょう。タクシーは四輪とバイクタクシーがありますが、バイクタクシーは個人で勝手にやっているためトラブルがつきものです。またタクシーは白タクと呼ばれる無許可タクシーに気を付ける必要があります。

    ベトナム戦争を題材にした観光名所は一度は立ち寄るべし

    ベトナムを語る上で、欠かせないのがベトナム戦争。1960年からはじまった宣戦布告なき戦争と呼ばれ、1975年の4月30日に終結しました。ホーチミンやハノイではベトナム戦争を題材にした博物館が多々あるため、学習意欲がある方はこれらの観光スポットを渡り歩くのもおすすめです。ベトナム戦争は米軍による枯葉剤被害が深刻で、その問題は現在も続いています。ホーチミンに訪れたのであれば、激戦区となったクチトンネル、ベトナム戦争終戦の場所統一会堂、世界の戦争ジャーナリストが撮影したベトナム戦争当時の写真が展示されている戦争証跡博物館などに足を運んでみてください。

    ベトナムは日本と相違点、共通点が多々あり、非常に興味深い国として映ります。ベトナム旅行をする前に、少しでもベトナムがどんな国なのかを知ってから出かけてみてください。

    Writer/この記事を書いた人

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    古川 悠紀
    トラベルライター

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    大学卒業後、日本で販売店営業、外資(米国)メーカー勤務を経て2011年にベトナムのホーチミンに移住。トラベルライターとしてベトナムを中心に東南アジアの旅行・生活・経済の記事を請け負う。実績にAll About、阪急交通社、自著「ベトナムとビジネスをするための鉄則 55」、寄稿「トリコガイドベトナム(アルク出版)」、「複住スタイル(英和出版)」、下川裕治著/編に記事の寄稿等がある。