ベトナムのお札に印刷されている人は誰?何をした人?

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ベトナムの各紙幣に印刷されている髭をたくわえた年配の男性、見事に全ての紙幣に同じ人が印刷されています。いったいこの人は誰なのでしょうか。実は、ベトナム南部の都市名の元になった人であり、ベトナム建国の父「ホー・チー・ミン」です。現在あるベトナム南部のホーチミンは、ベトナム戦争勝利を記念して、建国の父である彼の名前がつけられたのです。

では、彼は一体どういう人で何をしたのでしょうか?広く尊敬され、讃えられている彼はベトナムにどのような影響を及ぼしているのでしょうか。

目次

    ホー・チー・ミンってどんな人?

    ホーチミン氏の写真
    ホーチミン氏の写真

    ホー・チー・ミン(以下ホーチミン)は1890年のフランス領ベトナム中部に生まれました。フランスへの留学を志し、その夢が叶わなくても船員として世界中を旅して回る活発な青年でした。フランス語を話し、フランスで共産主義を学んだ結果、穏健なナショナリスト、民族主義者としてその名前を轟かせました。

    ハノイのホーチミン博物館にて
    ハノイのホーチミン博物館にて

    第2次世界大戦終了で事実上無政府化したベトナムを統治するべく、ベトミン(ベトナム独立同盟)を組織し、ベトナム独立宣言を行います。1945年9月2日に独立しますが、その後戻ってきたフランスと第1次インドシナ戦争で戦います。彼の強力なリーダーシップの元、フランスに決定的な打撃を与えて勝利、その地盤を確たるものにします。

    ところが、1960年代から始まるベトナム戦争で、再びベトナムはその独立を巡って戦火に巻き込まれて行きます。ホーチミンはベトナム戦争が激化する1969年に亡くなりますが、最後までベトナムの希望として人々を勇気付けています。

    共産党員としてのホーチミンの活動

    ハノイにあるホーチミンの家
    ハノイにあるホーチミンの家

    ホーチミンはベトナム共産党の基礎を築いた人物です。フランスでマルクス・レーニン主義を学び、ベトナムに持ち帰りました。当時彼は民族主義者としてフランスに滞在し、ベトナムの地位上昇に貢献しました。フランスからの独立ではなく、植民地の状況は保ちながらもベトナム人にフランス人と同等の権利を与えることを要求したのです。

    第2次世界大戦を機にベトナムに帰国し、独立宣言をしますが、フランス以下どの国にも認められることなく北緯37度線で北と南に分断されてしまいます。ベトナムの独立が悲願だったホーチミンにとって、南北分断は己の体が引き裂かれるような厳しい現実だったことでしょう。

    ところがその水面下で共産主義を民族自決の手段として利用し、再び民族統一を目指す活動が同時に始まったのです。彼にとってマルクス・レーニン主義に基づく共産主義社会の実現は大きな目的ではなく、あくまで民族統一を主眼に置いたベトナムの完全な独立が最終目標でした。その気概は彼の死後も受け継がれ、念願だった統一を実現させました。現在ではベトナム社会主義共和国として国際社会にその影響を及ぼすまでになっています。

    ホーチミンの遺体は今でも保存されている!?

    ホーチミン廟にて
    ホーチミン廟にて

    現在のベトナムの建国に大きな影響を及ぼした建国の父、ホーチミンは言わずもがな、ベトナムでは最も偉大な人として扱われています。そんな彼の遺体は、ロシアのレーニン、中国の毛沢東、北朝鮮の金日成のように冷凍保存され、今でもその生身の姿を拝むことができます。

    ホーチミン廟周辺
    ホーチミン廟周辺

    実は、ホーチミン自身の遺書には個人崇拝を避けるために遺体の保存はしないでくれ、とあったのですが、時の共産党指導者はホーチミンの求心力を利用しようと無視したのです。不本意ながらも遺体が亡くなったその瞬間のまま保存されているため、現代に生きる人々は彼の生身の姿を見ることができます。

    ホーチミン廟周辺の風景
    ホーチミン廟の敷地は政府直轄

    現在も根強いホーチミン人気は、保存された遺体があることで今でも彼を身近に感じることができるからでしょう。ホーチミンの遺体はハノイにあるホーチミン廟で見ることができます。

    まとめ

    ベトナムのお金
    ベトナムのお金はすべてホーチミン氏が描かれている

    各国のお札にはその国ゆかりの偉人が印刷されます。紙幣の種類によってその人物が変わるのが主流ですが、ベトナムの場合はすべての紙幣にホーチミンが印刷されています。

    ホーチミンの影響力の強さを物語ると同時に、現在でも人々の生活に深く関わることで、そのカリスマ性を永久保存しているとも言えます。ベトナム建国の父をしのぐ人物は、共産党統治のベトナム社会主義共和国国は現れることはないでしょう。

    Writer/この記事を書いた人

    著者の写真

    古川 悠紀
    トラベルライター

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    大学卒業後、日本で販売店営業、外資(米国)メーカー勤務を経て2011年にベトナムのホーチミンに移住。トラベルライターとして東南アジア各国を周遊・居住し旅行生活経済の記事を請け負う。実績にAll About、阪急交通社、自著「ベトナムとビジネスをするための鉄則 55」、寄稿「トリコガイドベトナム(アルク出版)」、「複住スタイル(英和出版)」、下川裕治著/編に記事の寄稿等がある。