ホーチミンの人気観光地クチトンネル、ガイドが教えない3つの実話

ベトナム南部、ホーチミン市から車で約1時間半、人気の観光地クチトンネルは、ベトナム戦争時代にベトコンが使っていたトンネルを一般公開している場所です。

カラシニコフの試し撃ちができたり、実際にトンネルに入ることもできます。当時ベトコンが使っていたといわれる罠や武器の数々の説明もあり、エンターテイニング精神にあふれた場所です。

ところがそのクチトンネル、実は堂々と展示されている罠などが実際は使われていなかったり、逸話に脚色があったりします。元南ベトナム側の中尉としてクチトンネルのジャングルで戦った退役軍人がツアーガイドとして働いているのですが、そんな彼がその目で見たものは現在の展示とは違うものだそうです。一般的なガイドが教えないクチトンネルの実話をご紹介します。

ディスプレイされている罠の数々、実際には使われなかった!?

ブービートラップの紹介
ブービートラップの紹介エリア

クチトンネルではジャングルの中にトンネルの穴があったり、当時の罠を再現したものが置いてあったりします。地面のある一点を踏むと、仕掛けてある罠が作動し竹槍が仕込まれた落とし穴に落ちるものや、ネズミ捕りの大きいバージョンのような罠、スパイク状になった鉄がついた木のフレームが兵士の顔に降ってくるものなど、様々な罠が展示されています。あたかもベトコンはこんなに賢く戦ったんだぞ、と自慢するかのようです。

クチトンネルのブービートラップ
クチトンネルのブービートラップ

ところが、その罠の多くは実際に使われていなかったどころか、当時は存在すらしていなかったのです。上述の退役軍人が実際に経験した罠は、ジャングルのなんでもないところに無造作に突き出された竹槍だったと言います。鉄でもなく、落とし穴でもないただの竹槍です。

罠でアメリカ兵や南ベトナム兵を殺すことを目的とはせず、傷つけ戦力を欠くことを目的としていた、といいます。大々的な罠を仕掛ける物資的余裕も時間的余裕もなかったベトコンが、こんなに大掛かりで精巧な罠を作ることは不可能だそうです。

クチトンネルのブービートラップ。落とし穴
クチトンネルのブービートラップ。落とし穴

ところが竹槍の罠は残忍で、一度刺されば傷が広がるのを恐れて抜くことはできないし、その痛みは尋常ではありません。傷ついた仲間を連れてジャングルを歩き回るのは他の兵士にとっても精神的にきついことなのです。

投降してきたベトコンは殺さない!

クチトンネルツアー
クチトンネルツアー。ガイドが必須の観光地……

現在のベトナムでは、アメリカ兵や南ベトナム兵は民兵であるベトコンを無残に殺戮した、という考え方が一般的です。クチトンネルも例に漏れずそれを事実として展示しています。ところが、例の退役軍人が証言するには、同じベトナム人であるベトコンを、特に投降して来た者は絶対に殺さなかったそうです。「撃たないで!投降するから!生きたいんだ!」こんなことを言われて殺せるはずがない。

当時を振り返って話す姿は、まるで当時の光景を思い出し、当時と同じように苦しんでいるようでした。投降して来た者は殺さない、トンネルから出て来た者に残忍な仕打ちをできる南ベトナム兵はどこにもいなかったと言います。

トンネルの穴はすべてフェイク用の穴?偽物と本物の穴の実態

トラップ用の穴
トラップ用の穴

トンネルに入るためにはもちろん地上にある穴を使います。出入り口を特定されないように作られた穴は無数にあり、それぞれに役割があります。人が出入りする穴、換気用の穴、煙突、そしてフェイク用の穴です。換気用の穴は、どう辿っても絶対に居住空間には繋がらないような仕組みになっていたり、人が出入りする穴は葉っぱでカモフラージュしてある小さな溝にあったり、工夫は様々です。

フェイク用の穴
ベトナム人が隠れていたとされる小さな穴

さらに、例の退役軍人が語ったフェイク穴の存在はベトコンの賢さを物語っています。フェイクの穴は、これ見よがしに空に向けてその口を開け、いかにも人が出入りしそうな風に作られています。

ところが、これはアメリカ兵や南ベトナム兵をおびき出すためで、手榴弾などを使わせることが目的です。爆発音の下ところに敵がいるとわかるので、戦いやすくなる上に全く犠牲が出ません。現在ではそのフェイク穴がベトコンが出入りするのに使われていたと説明しているようですが、実際は違っていたことがわかります。

信じるか信じないかは貴方次第!クチトンネルに行って真実を考えてみては

クチトンネルにあるベトコンの模型
女性のベトコンはスパイとして活躍した

なぜ、実際とは違う説明がされるようになったのでしょうか?それは、共産党政権下で作られたクチトンネルのツアーガイド用のガイドラインが一つの原因と言います。

観光客に教える項目は決められているので、それを伝えなければなりません。今回真実を教えてくれた退役軍人は他のツアーガイドに聞かれないように、道の端にずれて小さめの声で教えてくれました。それほど統制は厳しく、ベトコンを英雄のように扱いたいベトナム当局の意向が強く反映されています。

どれがどこまで真実かは分かりませんが、だからこそ、実際のその足でクチトンネルに行き、その目で確かめてみてはいかがでしょうか。